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677. 謙虚な問いかけ (2017/5/26)

『キャリア・アンカー』『プロセス・コンサルテーション』といった概念や著書で知られるエドガー・H・シャインの新刊『謙虚なコンサルティング ― クライアントにとって「本当の支援」とは何か』(英治出版、2017年)を読みました。著者紹介を見ると、来年90歳なのですね。

タイトルに「コンサルティング」の文字が入っていますし、事例も氏のコンサルタントとしての経験から採られています。しかし、監訳者の金井壽宏・神戸大学教授が序文で『部下や同僚の力になりたいマネジャーやリーダーにとっても、(略)学校のクラブやサークル、そして親子の対話の場にも十分に活用できる。』と述べているとおり、会話を通じて相手の問題解決を支援するような局面に広く通じるものがあると思います。

いくつか、一見すると逆接めいた点が面白かったので、それらをつまみながら心に残った箇所をまとめてみたいと思います。以下、コンサルタントをご自分に、クライアントを部下・同僚・子供などと読み替えてみてください。なお、書評というよりも個人的な感想や理解に基づいたメモですので、著者のメッセージを厳密に読み取りたい方は、本書をあたってみてください。

【複雑な問題でも、素早く支援できる】

第四次産業革命と呼ばれるほどの変化の時代にあって、組織の問題は複雑さを増しています。となると、コンサルタントには、従前以上に徹底的な分析・診断が求められるはず。しかし著者はクライアントとの「最初の会話」が重要で、むしろ最初の接触でこそ大きな成果を上げることが可能だと、自らの経験を紹介したうえでこう述べています。

ときには、クライアントに、複雑さを理解してもらい、手間暇のかかる診断と介入よりちょっとしたアダプティブ・ムーヴを講じたほうが得策だと気づいてもらうことが、最良にして最も素早い支援になる場合もあるのだ。

アダプティブ・ムーヴ ~直訳すれば「適応的な行為」~ は本書を象徴するキーワードの一つ。おそらくは重要な概念であるがゆえに、日本語訳を充てずにカタカナのままになっています。わたしがあえて意訳すると「置かれた状況に対応する次の一手」です。

クライアントが複雑と認識している問題を、その世界観に沿って解決しようとしても、もとより難しい。合理的に考えられる解決策は既に試されていることも多い。しかし、問題に初めて接した人間ならではの無知をいかし、素朴な質問や意見を述べてみることで、問題そのものの見方を変えられることがある。それが「素早い支援」だと理解しました。

【契約関係でも、打ち解ける】

上記のような「素早い支援」を行うためには、クライアントとの距離を従来よりも一歩縮める必要があります。しかも最初の会話でその関係を作らなければなりません。著者はその距離感を、「レベル2」と表現しています。

レベル1は専門家と顧客の距離。レベル3は親密な友情や恋愛感情を伴った距離。その中間がレベル2です(ちなみにレベルマイナス1も定義されています。これはネガティブな敵対関係)。

クライアントが問題を明確に定義できて、専門家がそれを解決するスキルを提供すればよいのであれば、レベル1で事が足ります。しかし現実には、クライアント自身がほんとうの問題に気づいていなかったり、気づいていても立場が邪魔をして本音が言えなかったりします。

それを乗り越えるためには、従来の取引関係よりも打ち解けた関係を早い段階で築く必要があります。そのためにコンサルタントが持つべき姿勢を、著者は「3つのC」にまとめています。

  • Commitment(積極的な気持ち)── 力になりたいという気持ちをととのえる
  • Curiosity(好奇心)── 「この人はどんな人なのか」「どのような問題が起きているのか」を知りたいと思う
  • Caring(思いやり)── できるだけ早く個人的な話を始める

3C:謙虚なコンサルティングの姿勢(シャイン) - *ListFreak

【問いかけるべきでも、最初は語りかける】

謙虚=控えめ=傾聴、というイメージがありますが、コンサルタントが傾聴ばかりしているとクライアントは緊張して率直に話しづらくなります。最初の接触における聴き方について、著者はこのように述べています。

私は以前の著作で、最初のステップとして常にすべきことは謙虚に問いかけることだと述べたが、今では文字どおり常にまず問うのではなく、むしろ関心を持って問いかける姿勢に徹することだと考えている。どういうわけか、そうした姿勢はときとして、自分の何か個人的なことを話すか、あるいは、私がCASE1でしたように、正直な反応に従って行動し、しっかり聴いていることをクライアントに実感してもらうと、最もよく伝わる。(太字は引用者による)

「自分の何か個人的なことを話す」。心を開いてもらうには、自分から心を開くべし。オープンネスの鉄則ですね。「正直な反応に従って行動」する。これは、話を聞いていて感じた違和感などを率直に口にすることを指しています。それはつまり自分の「積極的な気持ち」を相手に示すことであり、相手への「思いやり」にほかなりません。

【専門知識に裏打ちされた即興劇】

『コンサルタントの対応の新たなモデルは、正式の手順やルール、あるいは標準化された指針やチェックリストではなく、むしろ即興劇やジャズバンドに似ていると言える。』

著者はこのように述べています。ここ数年、意思決定の「その場」性に注目してきましたが、意思決定の支援においてもやはり即興性が求められているのだという思いを新たにしました。近く潜在顧客へのヒアリングの機会がいくつかあるので、試してみようと思います。


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