「スタイル」という魔法

パーソナリティ+事業性+社会性

社会的な課題の解決を対象とした事業プランコンテスト「スタイル2004」のファイナルプレゼンテーションに参加してきました。去年に引き続きメンターとしてプランのブラッシュアップに(ほんの少しだけですが)関わらせていただきましたので、感想をメモしておきます。

「スタイル」におけるプランの評価は、大まかに以下の3つの軸によってなされます:

・パーソナリティ
・事業性
・社会性

今回最優秀賞・優秀賞を選ばなかった理由として、審査委員長の田坂広志さんは「社会的インパクト」という言葉を使われました。上の評価軸に照らして言えば、より多くの人に認められる「社会性」があり、より「事業」的にスケールしそうなプランを求め続ける、というメッセージだと思います。

そして何よりも、そのような壮大なプランを背負える「パーソナリティ」が求められています。事業プランそのものは短期間で改善できます。しかし「パーソナリティ」には付け焼刃が効きません。「スタイル」の特長は、この「パーソナリティ」を第1回から一貫して重視してきたことでしょう。
 
具体的には、主催者のETIC.が、第1次の選考が終わった段階から長い時間を掛けて、応募者がプランをブラッシュアップしていくことを支援します。

第1次選考をくぐり抜けた応募者の方々は、「わたしはこれがやりたいんです」としかおっしゃいません。しかし2ヶ月にも及ぶブラッシュアップ期間を経た本番(ファイナルプレゼンテーション)では、

 自分はどこから来たのか。

 どこを目指すのか。

 そこに向けての一歩が、なぜこの事業プランなのか。


というストーリーに進化しています。迫力と真摯さに溢れた、強いメッセージがそこにはあります。


パーソナリティを引き出す魔法

そもそもの問題意識や志は、プランを提出した時点で既に各応募者の内にあります。しかし、それを自ら引き出して、一回のプレゼンテーションで聞き手に伝わるように表現するのはとても難しいことです。

ETIC.が応募者にかける魔法の核心は、化粧で見栄えを良くするのではなく、思い切って素顔で勝負する度胸をつけさせること。そうすることで本人の「パーソナリティ」が現れることを、ETIC.は知っています。

こんなことがありました。

メンターとして話を聞いたプランの一つは、明らかに駆け込みで作られたものでした。しかも実現の難しそうなプランです。わたしも他のメンターも「ああしてみたら」「こうしてみたら」と言いつつ、「これは難しい…」という空気が漂い始めてしまっていました。応募者の方も、もとより自信があって応募してきているわけではないのでそのような空気を感じ取り、「出直してきます…」と言いかねない雰囲気。

そこにディレクターの井上さんがやってきて「これって面白そうですよね!」。似たことをやっている人がいるだとかいう話をしながら、内向きに小さくまとまりかねなかった視線をもう一度外に拡げてくれました。

その後わたしはすっかりメンターを怠けていました。しかし、二ヶ月半後のファイナルプレゼンテーション当日。第1次選考から更に1/4に絞られた最終選考のリストの中に、その方の名前がありました。

その方のプレゼンテーションは、プランがご自身の個人的な経験によって動機付けされていること、またそれが社会的な意義のあるものであることが見事に表現されていました。言い換えれば、「なぜこの事業なのか」「なぜ自分なのか」がビリビリと伝わってくるストーリーです。この二ヵ月半のご本人の努力と、それを支えた主催者の努力に改めて感じ入りました。

その方を含む5組、とりわけ賞を受賞した3組の方々はいずれも「パーソナリティ」の魅力に溢れた方でした。賞の中には「その方のために」急造された賞もありました。iPPOプロジェクトの福井さんに贈られた「一歩賞」は、実際に一歩を踏み出してみた福井さんのパーソナリティが勝ち得た名誉です。

先ほど「魔法」と書きました。実際に魔法のような効果ではありますが、その実体はディレクター井上さん、代表理事宮城さんを中心としたETIC.スタッフの地味なフォローアップの蓄積に他なりません。杖を振っただけで成し遂げた成果ではないことは強調しておきます。


「スタイル」のこれから

「スタイル」は最優秀賞と優秀賞を選ぶことになっています。しかし3年目の今年も最優秀賞は出ておらず、今年は優秀賞もありませんでした。

3年間最優秀賞を授けないという結果になったことで、「それだけ厳しい審査をするのであれば、審査基準をもう少し明快にすべき」との意見も出てくるかもしれません。今年の基準で過去のファイナリストを評価しなおしてみると、違った結果になるかもしれません。

しかし、「スタイル」自身も走りながらながら成長している側面があり、むしろ多くのプランに磨かれて「スタイル」の目指す方向が少しずつ見えてきているような印象があります。具体的には、このイベントが社会的に広く認知されるにつれてジャッジの方々も賞の意義を見直し続けているし、また応募者の問題提起の内容に応じて新たな視点を加え続けているように思います。

受賞だけを目的として参加したならば、「スタイル」によって権威づけしてもらうことを期待して臨んだならば、そのような「若さ」にあるいは失望するかもしれません。しかし実際に参加した方々はおそらくそのような感情は抱かないでしょう。むしろ「スタイル」と共に成長できたことを誇りに思っていらっしゃるのではないでしょうか。

画一的な採点基準を設けるよりは、それこそ新しいスタイルにスポットライトを当てる方が、「スタイル」の意義に叶っていると思います。採点基準が見えてくると、応募者もそれに沿った人しか集まらなくなってきます。毎年「そうか、そういうスタイルもあるよね!」という驚きを感じ続けるためにも、現在のように恐れずに模索を続ける姿勢を応援したいと思いました。


…ちょっと早めに退出しましたが、わたしも「よし、やるぞ!」という元気をもらいました。

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作成: 2004/10/4 by:koji


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