509. 内向的だが内気ではない

【内向性と内気の違い】

Emotional Intelligence Theory(情動知能理論)、いわゆるEQ理論の提唱者の1人であるジョン・D・メイヤー教授は、その興味をPersonal Intelligenceへと発展させています。これはメイヤー教授の造語なので定訳がありませんが、「人格知能」あたりが妥当でしょう。来月にはその名も"Personal Intelligence: The Power of Personality and How It Shapes Our Lives"という新著の出版が予定されています。これも訳しておくと『人格知能:人生をかたちづくる人格の力』という感じでしょうか。

教授が今週Psychology Today誌のサイトに寄稿した記事"The Vocabulary of the Parts of Personality"を読みました。句読点にこだわってヒットした本を枕に、ご自身も専門である人格(personality)に関わる言葉づかいには敏感であると続けます。

たとえば、知人が誰かを「非社交的」(antisocial)と呼んだときには、思わず確認してしまうそうです。それは内向的(introvert)なのか内気(shy)なのかと。

内向的(introvert)と内気(shy)は、似て非なる概念です。教授の説明によれば、内向的な人は一人でいることを好みます。人嫌いというわけではありません。必要があれば社交的に振る舞えます。ただ、不特定多数よりは少数の知人との交わりを好み、四六時中人といるよりは一人でいることを好みます。
一方内気とは、人と一緒にいたいと思いつつ人と交わることに対する恐れを持っています。

なるほど。社交への欲求があるからこそ不安が生じると考えると、内気な人には実は外向的な人が多い、ということになります。

試しに"shyness introvert"で検索すると、両者の違いを説明しているサイトがたくさん見つかります。わたしにとってわかりやすかったのは、内向性は性格を、内気は行動を表す解釈であるという解説でした。内向性は性格なので容易には変わりませんが、内気さは克服することができます。

【余談:内向性への注目】

少し脇道に逸れますが、メイヤー教授がこの言葉を取り上げたのは偶然ではなく、「内向性」がちょっとした流行だからだと思います。下は、"introvert"という言葉がどれくらい検索されているかの推移を示したグラフです。

このきっかけの1つが、スーザン・ケインが2012年1月に出版した"Quiet"という本です。わたしは著者のTEDでのスピーチ「内向的な人が秘めている力」でこの内向性と内気との違いを知りました。"Quiet"は2013年5月に『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』という題で邦訳がでています。

【言葉の定義にこだわってみると、見えてくるものがある】

たしかに「彼は非社交的だ」というラベルを貼ってその人を理解したつもりになっていては、たとえば内気な人に潜む外向性を見抜くことはできないでしょう。

メイヤー教授は、このように人格を表す適切な語彙を使いこなすことが人格知能の現れのひとつだと述べています。教授はEI理論でも、感情を表す語彙を豊富に持っていること自体が、知能の構成要素(第3ブランチ「感情の理解」)であると定義しています。本ノートでも、先延ばしにひそむかすかな恐怖を見つけ、さらに恐怖を5つに分類してどれかに帰属させることで見えてくるものについて考察しました(『「先延ばし」にひそむかすかな恐怖 』)。

例によって、このアプローチを本サイトの興味である意志決定に活用できないかどうか、考えてみました。

たとえば、「決められない」といってもさまざまな「決められなさ」があります。どのような意味で「決められない」かがわかれば、決めるためのヒントがつかめるかもしれません。

「決められなさ」を理解するために、たとえば「自分は迷っているのか、悩んでいるのか?」という問いを掘り下げてみるのはどうでしょうか。辞書を引いて微妙な違いを吟味してもいいでしょうし、言葉を裏返して「迷いがない人」と「悩みがない人」を想像することで、迷いと悩みの違いが定義できるかもしれません。それが見つかったところで自分の状態を吟味すれば、決めるために必要なピースが見えてくるように思います。

ネットを「悩み 迷い 違い」で検索してみると、いろいろな解釈が現れます。やはり多くの方が、ふとしたきっかけで両者の違いを吟味し、そこから得た持論を自分の決定のために活かしているようです。わたしもわたしなりの解釈を披露したいところですが、長くなってしまうので今回はがまんします。


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作成: 2014/1/31 by:koji


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