687. 人を信頼するために必要なもの

【相手を信じるために必要なもの】

たとえば部下Aさんに仕事を頼むとします。Aさんがうまくやってくれるだろうと信じるには、どういった条件が必要かと考えてみると、2つの要素がありそうです。

1つは、Aさんがうまくやってくれるだろうと期待できる場合。Aさんには知識もスキルも意欲もあるし、類似の仕事の経験もある。だから大丈夫だろうという場合です。

もう1つは、Aさんの失敗をカバーしてくれる担保がある場合。ベテランのBさんがAさんをサポートするし、もしAさんが失敗しても代わりにBさんがやってくれるにちがいないという場合です。この場合、厳密には「Aさん」を信じているわけではなく、Aさんに頼んだ「仕事の完遂」を信じていることになりますので、間接的に信じているといってもいいでしょう。

成功すると期待できるから信じる。担保があるから信じる。これらは要するに、信じるに足る根拠があるということです。

【相手を信用するために必要なもの】

「信じる」に似た言葉に「信用する」があります。言葉の使われ方を見ると、先述の「根拠があるから信じる」行為に多く充てられているようです。

わかりやすいのはお金の貸し借り。以前「563. 人格でおカネが借りられるのか(フレームワーク思考の話) | 起-動線」というノートで引用した、お金を貸す側が借りる側の「信用」を推し量るための4Cはこれでした。

  • 【Character - 評判】 信用履歴など、築いてきた“経済民としての人格”は高いか。
  • 【Capacity - 収益力】 返済資金を稼ぎ続けられるか。
  • 【Capital - 資産】 返済資金に充てられる現預金や現物などはあるか。
  • 【Collateral - 担保】 返済できなくなった場合に換金できるもの(担保)はあるか。

信用の4C(about.com版) - *ListFreak

この4Cを先の「期待」と「担保」に当てはめると、上の3つが「本人が返せそうか」という期待、最後の一つが「本人が返せなくても返してもらうアテがあるか」という担保に分類できそうです。

Aさんへの仕事の依頼のような日常的な事例に戻ると、集められる根拠(期待や担保)には限りがあります。そもそも未来の話ですから、100%うまくいくとは言えません。Aさんに仕事を頼んで100%うまくいくとわかっているならば、うまくいくと「知っている」わけで、あえて「信じる」必要はありません。

とすると、Aさんがうまくやってくれるだろうと信じるには、もう1つの要素が必要です。それは、「根拠は十分でないけれど、Aさんに任せてみよう」という決断。リスクを承知で相手に委ねる・任せるという意味合いで「委任」というキーワードがよさそうです。

★相手を信じるために必要な3要素

  • うまくいくだろうという期待(事例・能力・意欲・人柄などを根拠に)
  • うまくいかなかったときの担保
  • 期待が低く担保が不十分でも、委ねよう・任せようという決断

前2要素、つまり根拠をもとに信じる行為を「信用する」というならば、第3要素の濃い「信じる」行為、つまり根拠がないか薄いのに信じる行為を「信任する」と呼べるでしょう。

【相手を信任するために必要なもの】

いま、Aさん自身が成功する期待値も低く、Aさんが失敗したときの担保も不十分とします。それなのにAさんを信じる、「信用不十分だが信任する」ためには、何が必要なのでしょうか。

それを考えるために、Aさんに頼んだ仕事が失敗したとしましょう。どうするか。

Aさんに責任を負わせるのも選択肢ですが、Aが責任を負えるなら、それは担保があるということですから、この思考実験からは除外されます。Aさんに限らず上司などの他者についても同様。とすると、責任を負うべきは頼んだ自分です。

こう考えてくると、信任するという行為の本質が見えてきます。期待や担保無しに信じるとは「相手の行動がもたらす結果に対するあらゆる責任を、すべて自分が引き受ける覚悟を持つ」ことにほかなりません。
※ そこまで思い定めなければ仕事を頼むべきでないという話ではありません。実務的には、そもそも会社組織の多くは有限責任会社として、負える責任の上限を定めています。

もしそうだとすると、人を信任するために必要なのは、自分に対する信用・信任ということになります。自分が大きな責任を負えるという自信や覚悟があるほど、大きな仕事を頼めるということです。

しかし信任も、言ってみれば、自分を担保にした信用です。信じるという行為には、さらに担保も期待もない対象があります。

ここまで、ある人の行動によって生じた結果の責任を最終的に誰かが負うという前提で考えてきました。しかし、そうでない状況もあります。たとえば、地球環境が悪化したため、宇宙飛行士Bさんに人類が移住できる星探しを頼むとします。Bさんの失敗は人類の滅亡を意味しますが、Bさんも、頼む側も、誰もその責任を負うことはできません。それでもBさんの成功を信じるでしょう。

このレベルの「信じる」は、「祈る」であり「賭ける」です。まさに信じて頼る、「信頼する」をここに充てることにしたいと思います。この要素を加え、リストを書き直しておきます。

★相手を信じるために必要な4要素

  • うまくいくだろうという期待(事例・能力・意欲・人柄などを根拠に)
  • うまくいかなかったときの担保(=信用)
  • うまくいかなかったときに責任を負う覚悟(=信任)
  • 他に選択肢はないという祈り(=信頼)

【相手を信頼するために必要なもの】

頼みごとがうまくいくという合理的な期待も持てず、うまくいかなかったときの担保もなく、責任を負うこともできない。それでもなお信じるためには、何が必要なのか。

これだという答えを見出すにはいたりませんでしたが、「消極的な信頼」と「積極的な信頼」があるようには思います。消極的な信頼とは、他の選択肢を探し尽くしたたうえで、この人を信じるしかないという信頼。積極的な信頼とは、親が子を信じるような、問答無用の信頼。信頼の不思議さ・奥深さは、「積極的な信頼」にあるようですので、機を見てもうすこし掘り下げてみます。


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作成: 2017/8/2 by:koji
更新: 2017/8/2 by:koji


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