062. 降りるのではなく道を拓く

ここ2日で4人の方と、それぞれ2時間ずつくらいお話をしました。2件は取材、1件は協業、1件は起-動線ランチと全然別のミーティングだったのですが、共通するテーマは「個人・仕事・そして社会のこれから」。いろいろ考えるネタを頂戴したので、雑感をまとめておきます。

■ スローワークあるいは新しい労働のありかた
最初にお会いした記者さんの問題意識はこんなところにありました;今後社会の二極化が進んでいくと言われているが、このままでは労働意欲を失ってしまう層が出現して来てしまいかねない。この問題を解くヒントがいわゆる「スローワーク」と言われているムーブメントの周辺にあるのではないか。

それでどうして世話人のところにインタビューに来てくださったのか、そこら辺は措くとして、逆にいろいろ考えるネタを頂戴しました。「スローワーク」という言葉は提唱者のためにとっておいて、ここでは労働意欲の喪失を食い止める「新しい労働」のあり方について、いろいろな話を聞き、話したよい機会でした。

スローワークといわれるような「新しい労働」とはなにか。もちろん答えはないのですが、少なくとも各人が「仕事の質・人生の質を重視した労働を追求していけること」のように思いました。

単におカネを得るだけの手段として労働を捉えるのではなく、自分が満足できること、社会的な意義が感じられることをやっておカネを得たい。言い換えると、まず総合的に自分の人生の質を高めることを考えて、その中に労働を位置づけていきたい。いま社会起業や非営利活動への興味が高まっていることが「新しい労働」を考えるヒントになると思います。

■ 二極化
『日本も二極化していく』というフレーズを最近よく目にします。よく目にし過ぎて、まるで国民的なコンセンサスを形成するために誰かが流布しているような気になるくらいです。二極化というとなんとなく年収の高いポストが減って低いポストが増え、貧富の差が広がっていくという話だと思いがちですが、それはおそらく結果としての二極化。その前に意識の二極化が始まっているようです。

2番目にお会いした方は大学生の就職支援事業をされている方でしたが、奇しくもその方も「二極化」を口にされていました。ただし学生の二極化です。日本の再生に関わりたい・起業したいというような、社会に積極的に飛び込んでみようとする層と、そもそも就職したいのかどうか分からない、あるいは意欲のない層とが分かれてきているとのことでした。

「無理もないと思うときもあります」とはその方の言葉。自分の父親の世代、いま日本を背負っている世代が楽しそうに働いていないのに、どうして社会に・労働に夢を持てるのかと。わたしも話をお聞きしながら、この社会に適応しようとしてくれる学生さんの存在をありがたく思うと同時に、日本を本当に変えてしまうのは、いまNOと言っている連中の方から出てくるかもしれないと、そんなことを考えました。

■ 降りる
そして2人目の記者の方の視点は、「大きな会社で立身出世」みたいな標準的なモデルが崩壊していく中で、社会人は何を拠りどころに働くことになるんだろうということ。言葉は違いましたが、やはり最初の方とよく似た着眼点でした(ちなみにお二方ともいわゆる四大紙の記者さんです)。

その方との話で印象に残ったのは「降りる」という言葉。実は最初の記者さんも、ランチをご一緒した方も、この言葉を使われていました。

降りる、ということは、それまで乗っていた乗り物があるわけです。この乗り物は、よくある話ですが、偏差値の高い大学 → 給料のいい会社 → 社内で昇進 という乗り物のこと。どうもこのまま行くと廃線になる不安を感じながら、当面はみんな乗っている。この「降りる」という言葉はとても象徴的だと思いましたし、語感としてよく分かりますよね。

しかし各人各様であるはずの「生きざま」が、どうして乗り合いバスになってしまうのか。みんな同じ乗り物に乗って動くのではなく、一人ひとり自分の道を行っているはずです。キャリアチェンジが「降りる」と喩えられてしまっては怖くて降りられません。学生がそんなバスに乗りたくないと言い出しても当然かもしれません。


われわれ現役の社会人に求められているのは「降りる勇気」。勇気を持ってそれぞれの労働観・人生観を追求していくことではないでしょうか。それは本来「降りる」ことでも何でもないはずです。単一の尺度(たとえば年収)を比較し合うのでなく、それぞれが定義した人生の目的に向けて邁進していくこと。そういう楽しい挑戦が可能であることを実証していければ、学生も、われわれ自身も、先行きに自信が持てるような気がします。


# 以前にも「降りる」勇気について書いていたことを思い出しました。
> コンセプトノート『ピーターの法則』

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作成: 2003/7/17 by:koji


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